スナップアップ投資顧問の音楽業界分析
音楽配信会社への楽曲提供に慎重だった大手レコード会社が、積極姿勢に路線を転換した。膨大な曲数を記録できるハードディスク駆動装置(HDD)搭載の音楽プレーヤーが普及期に入った。
以上の理由により、音楽配信事業への参入が活発化した。米国ではごく当たり前のネットを通じた楽曲購入の環境が、日本でも整ったのだ。
オリコンが2005年1月に参入
こうした参入の機会をうかがっていた一社がオリコンだ。オリコンは2004年10月6日、有料音楽配信の新会社「オリコン・デジタル・ディストリビューション」を通じ、2005年1月から配信事業に乗り出すと発表した。
オリコン・デジタル・ディストリビューションのサービスの特徴は、CD販売ランキング情報(オリコンチャート)を提供している新聞社10社以上のサイトからも楽曲をダウンロードできる点だ。例えば、Web上で新聞社が配信する音楽記事を読み、連動する楽曲を購入するといったことが可能になった。
ユニバーサルミュージックや東芝EMIなどが楽曲提供
オリコンに楽曲を提供したのは、レコード会社のユニバーサルミュージックや東芝EMIなど15社以上にのぼった。その結果、提供できる楽曲数は約
7万曲に及んだ。売上高は2006年度に200億円(初年度35億円)という青写真を描いた。
オリコンの小池恒右社長(当時39歳)は、「1970年代から最新ランキング曲までを保有しているのが当社の強み。(レコード会社の許諾を得たうえで)車載搭載端末やデジタル家電への提供、さらにはアジア地域へもサービスを拡大したい」と語っていた。
小池恒右オリコン社長プロフィール
小池恒右《こいけ・こう》
明大法卒。1988年服部セイコー(現セイコー)入社、1990年オリジナルコンフィデンス(現オリコン・エンタテインメント)入社、副社長などを経て1999年からオリコン社長。39歳。東京都出身。
レーベルゲート
一方で、先行する大手も攻勢を強めた。レコード会社など18社が共同出資し、2000年からサービスを始めた「レーベルゲート」は、2004年4月1日に音楽配信サイト「モーラ」を立ち上げた。
「モーラ」は2004年当時、国内最大の約8万曲(1曲税込み158円)を提供できた。利用数は月間約17万のダウンロードを数えた。
NTTやUSEN
音楽配信事業をめぐっては、このほかにもネット情報提供会社のエキサイト、NTTコミュニケーションズ、ブロードバンド事業のUSENブロードネットワークスなどが2004年春以降、異業種からの参入が相次いだ。
パソコンで手軽に購入できるとなれば、これまでCD店に足が遠ざかっていた“団塊世代”の需要を喚起できると期待された。
音楽配信とは
インターネットを使った楽曲販売。配信サイトに掲載されている楽曲を視聴後、クレジットカードなどで決済し、ダウンロードできる。楽曲のファイル形式は、オリコンなど8社が米マイクロソフトの音声圧縮形式「WMA」を採用。
レーベルゲートは2004年内にも「WMA」と米アップルコンピュータの音声圧縮形式「AAC」に対応した。
米音楽配信市場では、アップルが2003年4月に開始した有料音楽配信サービス「アイチューンズ・ミュージックストア」(1曲99セント=約110円)が2004年9月に累計1億2500万ダウンロードを突破した。